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2012-12-22

隻眼の武者(せきがんのもののふ)

彼方さんに捧ぐ


注意:ちょっとグロめ

記紀にあり。
弓月君という秦氏の祖、百済より百二十の県(こおり)から人々を連れてこの大和に来帰り(もうけり)、と。

526年、大和。
「いたか―」
「この洞穴に少しいる。お前もこっちへ来い」

ここは秦氏の住む集落である。
兵士たちは、筑紫君磐井(つくしきみのいわい)の部下の命を受け、渡来人である秦氏の討伐をしていたのであった。
大王は新羅に奪われた百済の国、南加羅・喙己呑を奪い返すため、救援の軍を百済に送っていた。
これに新羅に加勢する筑紫君磐井は反発し、大王の進軍を妨害した。
磐井の乱である。
筑紫君磐井の部下は百済系の渡来人は滅ぼすべし、という独断から、秦氏を殲滅しようとした。
秦氏は50年ほど前に大陸百済から移住してきた、渡来人であった。
その祖は秦の始皇帝とも、百済の王族とも云われる。

「見ろ、女もいるぞ、やったな」
兵士は好色そうな目を光らせた。
殺す前に犯そうというのである。
「やめろ、女子供は殺すな」
洞穴の中の男が言った。
「余計な口を叩くんじゃねえ」
そう言うと兵士は鎌で男の頬を掠った。
「……っ」
男は苦痛げに顔を歪める。
「余計な口を叩く奴は、こうやって嬲り殺してやる」
兵士は愉快気に目を細め、口元で笑った。
「私はこの集落の首人(おびと)だ。この首を差し出せば、お前は上の者に褒美を与えられるだろう。だから女と子供は手にかけるな」
「渡来人ごときに指図される筋はない。奴婢にすればいいんだ、渡来人なんて」
「我らが祖先は秦の始皇帝である。流浪の民になったとはいえ、お主のような野卑な男に殺されるとは……。先祖に対して申し訳が立たぬ!さっさと首を切れ」
「生意気な野郎だな。俺に指図するんじゃねえ」
そう言うと兵士は男の左足を切り付けた。
「うっ……!」
男は片目を閉じて苦痛に喘いだ。
次は右足、その次は左腕、切り落とすわけでもなく、傷付けるだけだ。
「やめろ、ひと思いに殺してやれ」
駆け寄ってきた別の兵士が言う。
「ふっ、一兵卒ごときに同情されるとは、私も落ちたものよ」
男はそう言うと、兵士の鎌を奪い取ってこう叫んだ。
「私を殺し、両腕、両足を切り落とすがいい。我らが子孫は雨のように各地に遍く散らばって、必ずやそなたの子孫を滅するだろう。秦氏は滅びぬ!」
そして鎌で両目を潰し、次に心の臓腑に刃(は)を突き刺した。
急所を外したのか、男はすぐには息絶えなかった。
後から来た方の兵士が男を憐れみ、とどめを刺して両手両足も切り落としたという。


白村江で活躍した秦造田来津(はたのつくりのたくつ)は、男の曾孫である。
秦造田来津は優れた腕力・脚力、そして人並み外れた視力の持ち主であった。
彼は高台に登りさえすれば、遠方の敵の布陣をその目で見ることが出来たという。

また、男の言った通り秦氏の子孫は各地に散らばり、ある者は大工となり、ある者は機織りとなってその存在感を強めた。
男を嬲った兵士の子孫は常世神(とこよのかみ)信仰に与して、聖徳太子の側近であった秦河勝に滅ぼされたという。


   参考文献
水谷千秋 2009 謎の渡来人秦氏 文藝春秋 

*****

ここでいう「隻眼」は辞書でいう第二の意味「ものを見抜く眼識。すぐれた識見」で、片目なわけではありません。
「赤(隻)」に対して「青」の、蒼虹(そうこう)のナントカという話しも書きたいなー。
秦河勝あたりを主役にして。
蒼虹は「青い目」の意ね。造語です。勝手に作りました。
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2012-12-05

和歌に悩む

電撃文庫に落ちたことがわかったので、記事をコメントごと戻します~。



実能が主役の小説を書いているのですが、和歌の訳に悩んでおります。

ひとめ見し人はたれとも白雲のうはの空なる恋もするかな

という和歌の訳として、

「あなたを一目見て、あれは誰かと誰何(すいか)したけれど、わからない。そして私はあの白い雲のように上の空だ。でもそんな恋もいいのかもしれない」
は適当なのか。

岩波の千載和歌集には「ヒント」のようなものしか載ってなくて。
「知らず」を掛ける、というのと、
「空」は「白雲」の縁語、としか。

岩波文庫の千載和歌集、意訳が載っている和歌もあるのですが、大体がこんな感じで失敗したかなーと。
訳がきっちり載っているであろう単行本(岩波の新日本文学大系)の方を買うべきだったかな(^_^;)
というか文庫なんだから訳はあまり載ってないものだと思えという話ですね、最初から。

和歌はやっぱり難しい(>_<)。
全然読めない。

創作和歌として、「蓑虫のすげ替えたるは衣色」と詠みかけたら
「恋に沈むは色なきにけり」

と続けるのはどうなのか、とか。
蓑虫のすげ替えた色は何色?という問いかけに対して、恋に沈んでいるのなら色はないよ、と答えている感じ。

で、「下紐は解けずは解けず小夜衣その移り香にしむと身ともがな『夜着である小夜衣の下紐が解けないのならばそれでいい。だがせめてその移り香を染み込ませたい(当時人から恋心を持たれると自然と下紐が解けるという言い伝えがあった)』」
が続くという。

色はない→香りだけ、という発想に実能はなったということにしようかと。

無理矢理感があるかなあ。


この記事はそのうち消します。
その訳や和歌はおかしいとかご意見があったら仰って下さいm(__)m




コメントありがとうございますv
訳を教えていただき感謝です☆

「一目見た人を誰であるとも知らないまま、白雲が上空にあるようなうわついて落ち着かない恋におちいったことだよ」
>説明くさくないきれいな訳ですね~。

また、解説として、「夢みるような恋をうたうが、自省を失わせる恐ろしさをも潜める恋への展開を予感させる歌でもある。」
>「恐ろしさをも潜めるような」じゃあやっぱり私の訳はニュアンスが違いますね。
小説書きあげてしまったんですが、どうしようかな(汗)。
そして和泉書院さんからも千載和歌集はでているのですね。
ノーマークでした(><)
詳細な解説付きでいいですね♪
2013-02-04 22:12 | ゆきめ URL [ 編集 ]


参考まで
こんばんは。

横から失礼します。

私の手元にある、上條彰次氏の校注「千載和歌集」(和泉書院)の歌意によりますと、

「一目見た人を誰であるとも知らないまま、白雲が上空にあるようなうわついて落ち着かない恋におちいったことだよ」

とあります。

また、解説として、「夢みるような恋をうたうが、自省を失わせる恐ろしさをも潜める恋への展開を予感させる歌でもある。」

とあります。
2013-02-04 03:12 | 片割月 URL [ 編集 ]


返信
コメントありがとうございますv

グーグル先生にわざわざ聞いていただいたということで、あっ、ありがとうございます(汗)。

私の和歌の訳と全然違うますね。
失敗したかなー。

「ひとめ見し」、が「アバンチュール」にあたるということなのでしょうか。
「一目逢いし」ならわかるんですけれどねえ。

う~ん。
単行本の本を買うべきでしたね(^_^;)。
2013-01-31 21:16 | ゆきめ URL [ 編集 ]


Google先生に訊いてみました(汗)

この方の解釈ですと、
「あなたにとっては一夜のアバンチュールだったのでしょうけど 私は恋い焦がれて何も手につかない有り様です」
って感じなんでしょうか。(センスの無さに定評のある私です)
2013-01-31 00:58 | 布袋葵 URL [ 編集 ]


コメントありがとうございますv

歌の意味をわかりやすくしようとしすぎると、説明くさくなって話の流れが分断されてしまう恐れがあるので、いろいろ試行錯誤されてみてはいかがでしょうか? >そうですね、いろいろやってみます。

これだけアイデアが湧き出ることはない、というなら、それはもう書けってことですよ!
書きあげられたら読みに伺います♪

ではでは。
2012-12-09 08:35 | ゆきめ URL [ 編集 ]


こんばんわ。
お返事ありがとうございます。

>和歌の内容を物語の中に挿入させる
和歌がらみの話はこういう部分が難しいですよね。
歌の意味をわかりやすくしようとしすぎると、説明くさくなって話の流れが分断されてしまう恐れがあるので、いろいろ試行錯誤されてみてはいかがでしょうか?

宮内卿の話は、ある歌を眼にしたのがきっかけでババーッとアイデアが出てきて、それを書き出したのがきっかけだったりします。
そもそもは書くつもりは全くなかったのですが、これだけアイデアが湧き出ることはあまりないことなので、何とか形にしたいとは思っています。

明日、宮内卿の本が届くので、近いうちに手持ちの宮内卿関連の本を紹介する記事を書く予定です。

この記事は外す予定だとありましたね。
僕のコメントのことはあまり気になさらないで下さい(笑

それでは。
2012-12-09 01:15 | Graham URL [ 編集 ]


コメントありがとうございますv
「その歌から感じるニュアンスを文章の流れに取り込んでみる」難しいですねえ。
和歌の内容を物語の中に挿入させるってことですよね。
うーん、私の力量不足を痛感してしまいます。
投稿用の小説なのでわかりやすくしないと、っていうのもあります。

「後鳥羽院宮内卿の話し」すごいですね!
想像もつきません。
難しそうなお話ですね。

この記事は投稿後の審査期間中は外す予定です。
応募要項にそのように書かれているので。
一週間ほどしたら消すつもりだったのですが、せっかくコメントいただいたので残すことにします。
2012-12-08 22:01 | ゆきめ URL [ 編集 ]


こんにちわ。
千載集はあまり手軽な本がないですが、結構使用頻度が高そうですし、いい本をお持ちになっていた方がいいかもしれませんね。

僕は小説内には現代語訳は表記しないようにしています。
個人的には具体的な意味よりも、原文でそのフィーリングを響かせた方が印象に残ると思います。
その歌から感じるニュアンスを文章の流れに取り込んでみてはいかがでしょうか?

ついでに以前のコメントの質問に。
僕が書こうとしているのは後鳥羽院宮内卿に関しての話です。
資料がほとんどない人なので、かなり想像が入っています(笑
2012-12-08 17:42 | Graham URL [ 編集 ]
2012-12-02

「言霊」参加

「言霊」というグループに参加することにしましたー。

http://www.tonao.net

天之日矛の話しは挨拶代わりに書いたものです。
逸話の密度を高めたといった体で、小説といえるほどのものではありませんが。

よろしくお願いしまーす♪
2012-12-02

りんごと紫芋のケーキ

moblog_01a68a6f.jpg
moblog_71d28ad7.jpg

レシピはhttp://cookpad.com/recipe/692805から♪

紫芋しか家になくて(^_^;)
見た目ちょっとグロめ?
さつまいもが大きかったのか、いもの味が強いです。
アーモンドとくるみは中に入れようとして忘れてて、上にのせちゃいました。
あとシナモンを入れるのも忘れちゃった(汗)。
ベーキングパウダーがなくて重曹を使ったせいか横に膨らんじゃってます。
バターがダマになってしまってこしていたらえらい時間がかかりました。
お菓子作りの「勘」が鈍ってきているようです(笑)。
そのせいで生地が気持ち少なめになってしまったかも。
もっと甘くても良かったかもしれません。
ナッツ類が香ばしくてまあまあ美味しいです。

よければ作ってみて下さい\(^O^)/
2012-12-01

クリスマス仕様にしました。

テンプレート変えてみました。

12月25日までこれにします♪
プロフィール

ゆきめ

Author:ゆきめ
ブログタイトル:しおんのいだしぎぬ。

日々のこと、趣味について語りたいと思います。
心理学、西洋占星術、歴史(主に院政期)など。
よろしければおつきあいくださいませ☆

2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

公募小説の投稿などは「遠野紗雪」という名前を使っています。
note、「小説家になろう」サイトにも投稿しています。

このブログ内の文章の無断転載等はおやめ下さい。

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お手数おかけしますm(_ _)m

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