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2016-01-16

今鏡ワンドロ「茂子」

永承元年(1046)――。

禎子内親王は後見人ともいえる立場にある能信の邸、閑院第で過ごしていた。
閑院第は能信の妻の祖父、公季から譲られた邸で、広大な面積を誇る。
ときの権力者頼通との仲が良好でない禎子内親王に邸を提供しようとする者はいなかったので、
能信はこのときばかりは義祖父の厚意をありがたく思った。

「東宮の添臥(そいぶし)の姫の支度は?」
厳かな声音の禎子内親王。
「万事につけて、滞りなく」
それにこたえる能信。
御簾越しではあったが、二人の目が合った瞬間が、一瞬だけあった。

(……なんとしても、皇子を)

二人の思いは同じだった。


添臥の姫の入侍の日、東宮は用意された閑院第の局で案内役の者が来るのをじっと待っていた。
十二歳の幼い東宮にとってその時間は退屈で、時間が経つのがとても遅く感じられた。

(添臥の姫といったって実父は中納言じゃないか。僕はどこまで侮られているんだ)

幼いながらも、母親に似て自尊心だけは高いこの東宮は、この婚姻を不本意なことだと考えていた。

(邸の者はたいそう美しい姫君だと噂しているが……。よし、先に姫の顔を見て来てやろう。それで気に入らなかったら、儀式を取りやめさせればいいんだ)

東宮は局を抜け出し、添臥の姫のいる局へと忍び込んだ。
勝手知ったる邸の中、というやつだ。
女房の目をかいくぐり、姫のいる几帳のそばによる。

几帳の隙間から垣間見た姫を見て、東宮は息をのんだ。

透明感のある肌に、切れ長の瞳。
氷柱のように怜悧な美貌である。

(まさか、こんなに美しい姫だったなんて……)

そこで姫が視線に気づいたのか、声を上げた。
「誰か、いるの?」
東宮は退こうとして、几帳にぶつかってしまった。
がたっと音が出る。
「まさか、東宮?」
驚いたように言う添臥の姫。
東宮は、
「あっ、その、はい」
「そうなのですね。あら、嬉しい」
姫が顔をくしゃくしゃにして笑った。

(あっ、氷のような美貌が一瞬崩れた)

東宮はそう感じたが、それを残念には思わなかった。
親しみやすく、かえって好ましいと感じられた。

「でも儀式はきちんとしませんと。お戻りになって?」
姫がお願いするように言う。
その言い方が少しお姉さんっぽくて、東宮はまた胸をどぎまぎさせる。

(僕よりも年齢は上なのかな)

東宮は「はい」と返事をすると、もとの局に戻った。
その後は儀式を滞りなく済ませ、姫に、逢った。
姫の名は茂子といった。


翌日になって、能信はその妻と手を取り合って、
「大・成・功」
と喜んだ。

姫が美しいと邸の者に噂させるようにしたのも、案内役が来るのを遅らせていたのも、全ては姫の養父母、能信夫妻の作戦だったのだ。
気位の高い東宮が、実父は中納言という姫の身分をよく思ってはいないことを、能信は知っていたのである。

「まさかこんなにうまくいくとは思わなかったが」
能信が呟く。
入侍後の二人の仲は本当に睦まじかった。
「あとは、皇子の誕生を待つばかりだな」
「あなた、それはいくらなんでも気が早すぎますわ」
能信の妻がふふっと笑う。
「そうか?」
「ええ」
「東宮はまだ幼くあらせられますもの」
「それもそうだな」
だが二人の、いや禎子内親王を入れた三人の念願は叶い、七年後に茂子は皇子を生んだ。


数年後にいとこにあたる馨子内親王が入侍したものの、二人の仲の良さは相変わらずだった。

東宮は明るくておおらかな茂子の前でだけは、東宮という自分の立場を忘れて素直に甘えることが出来た。
茂子の膝に頭を乗せながら、
「私は本当に帝になれるのかなあ」
とごちる。
茂子はやれやれといった様子でくすくすと笑い、
「もちろんですわ」
と答える。
「どうして君はそう断言できるんだい?」
「私の祖父は人相を見ることが出来たのですって。その力が、私にも少しありますの。あなたさまは御位につかれます。これはもう、決まっていることなのですわ」
「本当かい?」
「本当ですわ」
茂子はにっこりとほほ笑む。
「そうか、ならいつ御位についてもいいようにもっと学問に励まねばな!」
「ええ、ええ」
茂子の返事を待たずに、東宮は頭を上げて走り去っていった」

(私に人相見の力がある、それは嘘だけれど。
でも、このぐらいの嘘はかわいいものだわ。大嘘つきの、あの方に比べれば。)

東宮は、馨子内親王を召したことは一度もないなどと言う。
召していない御方の腹に、どうして子が宿るのか。
全く、いけしゃあしゃあと。

だが、茂子はどうしても東宮を憎めない。
それが自分に対する思いやりからだからと、分かっているからだ。
嘘をつくならば、もっとうまくついて欲しいものだけれど。
仕方ないわ。
そういう人なんだもの。

茂子はそう割り切って万事をやり過ごしてきた。
くよくよしたって、どうしようもない。
難しい立場にある夫、儚い存在の私。そして、私たちを嘲笑う周りの者たち。
思い悩むことはたくさんあるけれど、私に出来ることは、もうないのだ。
茂子はそうした思いを胸に秘めて、女房に「局を片付けるように」と指図をした。


数年後。
茂子は病に臥せっていた。
「姫、しっかりせよ。私が帝になるのを、そなたに見届けてもらわねば困る……!」
東宮が茂子の手を取る。
「東宮……」
「加持祈祷も行っておる、なにか、なにか心にわだかまっていることはないか。それを口にすれば病は良くなるだろうと、祈祷の者はいっておるのだ」
東宮の長年の嘘に気づいていたことを、今言ってしまおうか。
気にしないふりをしていたけれど、それにずっと傷ついていたことを、今。
「東宮」
茂子は東宮に視線を向けた。
「私は、あなたと一緒にいられて、幸せでした。出来ることならば、あなたを見送る立場の方がよかったけれど。どうやらそれは叶わないようです」
「姫……」
茂子の手を強く握り直す。
「姫なしで、私はこの先どうしたら良いのか……」
年上の妃である茂子に、ずっと甘えてきた東宮であった。
心細さが募るのであろう。
「東宮。一つだけ、わがままを言ってもよろしいですか」
「ああ、好きなだけ言うがよい」
「私以上に、他の女人を愛さないと、誓って下さい」
「……ああ、ああ誓うとも」
「本当ですか?」
茂子がくすっと笑う。息が苦しそうだ。
「本当だとも。私が嘘を言ったことがあったか?」
おおありだ、と茂子は思ったが、口にも、顔にもださなかった。
「そう、ですわね」
この方はきっと、また愛する人を見つけるだろう。
人を愛さずにはいられない、心根の弱い人だもの。そして、私はそんなこの方を愛してきたんだもの。
私の言葉を、守ってはくれなくていい。ただ、ほんの少しの罪悪感だけは感じて、いて。

茂子は東宮の目をじっと見つめた。
視線を逸らすと、そばにいる女房に
「最期の時が来たようです。東宮を下がらせなさい」
と指図した。
東宮は女房に連れられて、局を去っていった。


この六年後、東宮は即位した。
後三条天皇である。
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2016-01-10

新潟市まで行ってきました☆

友達と新潟市で開催している蜷川実花展とラフォーレ原宿新潟の閉店セールに行ってきました~(*´ω`*)

ちょうど成人式があって、混んでいました。

蜷川実花展は本当に素晴らしかったです。
ブログには載せませんが、写真OKの空間もありましたよ。
多数の芸能人をモデルにしたスペースは、これ一冊の本にしてくれたら買うかもしれないな~と思いました。
クリアファイル一枚とポストカードを二枚買っちゃいました。






ラフォーレ原宿新潟に行く前にラブラ万代へ。
可愛い商品がいっぱいで目移りしてしまいました。
しかもバーゲンで安い!

ラフォーレ原宿新潟は案の定お店も少なくて、服もあまりいいのはありませんでした。
ラブラ万代と比べると活気が全然なくて、ちょっと寂しかったです。


帰り道は高速の出口を間違えて、遠回りして朝合流したところに戻るというへまをやらかしましたが、無事帰れてよかったです。
一日長かったけど楽しかったです(*´▽`*)
2016-01-07

思いつきホロスコープ診断7

後三条天皇のホロスコープを診てみます。
長元七年七月十八日 京都生まれ
西暦にすると1034年9月3日

〈ユリウス暦で診た改訂後〉

乙女座の第二旬の太陽
実利的な知性を持ち、優れた識別眼を持ちます。小心でスケールの大きさには欠けますが、綿密な計画性と几帳面さがあります。自立心の強い、頼りがいのある人物です。組織的な思考力と具現性があり、経済手腕にも富んでいます。
ただ、否定的な部分が強く出過ぎると、欲ばかり深くて実際には何もしない人になります。プロセスを練る努力を放棄し、いきなり結論を出そうとして失敗することもあります。

牡羊座の月
元気がよく活発で、衝動的な性格です。進取の気性に富み、人生に野心的で指導者の地位を熱望します。
短気で苛立ちやすく、刺激されるとよく興奮し、喧嘩をしますが仲直りも早いでしょう。
恋に燃えやすく、異性を追い求める方ですが熱が冷めるのも早いでしょう。

土星と天王星の合
強固な意志と、異常な方法ではあるけれど実際的な計画を持ちます。
苦境に耐え抜く力は抜群ですが極端に独立的な生活方針を持つため、風変わりな人物となりがちです。
肉親との疎遠や貧乏が平気だったり、概して異常な人生となりやすいでしょう。

これに月がトライン(120度)で調和
牡羊座の月と調和ということで、バイタリティを持って計画を進めることが出来ます。

太陽と海王星がオポジション(180度)
子供っぽく、自己中心的なところがあります。ある種の無関心があり、無定見な人生となりやすいでしょう。あるいは現実離れした夢のような名声や成功を渇望し、しばしば偽善に走ったり虚業を志向することになるでしょう。
太陽、木星、海王星が木星を中心にメデイエイション(調停)
太陽と海王星の不調和がいくらか和らぎます。
木星の拡大性や幸運を生かせれば、物事は上手くいくでしょう。

月、冥王星、水星が冥王星を中心にT-スクエア
感情・権力・知性が鋭く対立します。
知性にあふれた政治を行いますが、感情的になることがあるかもしれません。

太陽、木星、冥王星が木星を中心に小三角
意志が強く、政治の場でそれを押し通すことで幸運が開ける配置です。
小三角はスケールは小さいのですが、使いやすい座相ですので、実際的に役に立つことが多かったのではないでしょうか。

〈まとめ〉
冥王星が効いています。政治や権力を持つことに向いていたのでしょう。
木星の配置もいいので物事を拡大させる、発展させるということにも向いています。
運は良いというか、強いです。意志が弱いとその運を上手く生かせない、というタイプなのではないでしょうか。
大惑星がアスペクトをとっているので、スケールの大きい人生を歩むことになりそうです。

〈グレゴリウス暦で診た改訂前〉
2009/05/26 01:52 参照数135

乙女座の第二旬の太陽。
実利的な知性を持ち、優れた識別眼を持ちます。小心でスケールの大きさには欠けますが、綿密な計画性と几帳面さがあります。自立心の強い、頼りがいのある人物です。組織的な思考力と具現性があり、経済手腕にも富んでいます。
ただ、否定的な部分が強く出過ぎると、欲ばかり深くて実際には何もしない人になります。プロセスを練る努力を放棄し、いきなり結論を出そうとして失敗することもあります。

山羊座の月。
物事を真面目に突き詰めて考える方です。規律正しく厳格で、ある程度の管理能力を持ちます。利己的な野心があるためか、時には強敵を相手にまわしたり、人々の抵抗を感じることもあるでしょう。計算高く、人の感情に対し関心を持たないという一面もあるようです。
ロマンスとは無縁な人柄ですが、一度心が決まればその愛情は長く続き、心変わりすることはありません。

月と冥王星の合(0度)。
爆発的に気分が変わりやすく、極端な感情表示をする傾向があります。プライドの高さから人間関係が絶えることも多いようですが、不思議と人を惹きつける魅力があります。人生において新局面を開く能力があり、時に応じて生活方針を刷新します。

月・冥王星に太陽がトライン(120度)。
新局面を切り開く上で自らの意思(太陽)が同方向に向かうため、目的が見つかりやすく、それを達成することも出来るでしょう。
月と太陽の調和座相は葛藤の少ない穏やかな性格を表し、人気運もあります。育った環境や若年期に受けた教育が成人後の人生コースを決定することが多いでしょう。
冥王星と太陽の調和座相は自分の信念に殉じようとする傾向を持ち、自己の主権を渇望します。人生上で突然の変化を遂げやすく、新機軸を打ち出して成功します。

土星と天王星の合。
強固な意志と、異常な方法ではあるけれど実際的な計画を持ちます。苦境に耐え抜く力は抜群ですが極端に独立的な生活方針を持つため、風変わりな人物となりがちです。肉親との疎遠や貧乏が平気だったり、概して異常な人生となりやすいでしょう。

土星・天王星に火星がスクエア(90度)。
土星と天王星の合に火星の力がマイナスに働くため、闘争心や攻撃性、活動力が裏目に出やすいでしょう。そのことによって孤独を深めたり、人々の反感を買うことになるかもしれません。
土星と火星の不調和。疑いと不信の念を抱くため、周囲の抵抗と敵意を招きます。力が尽きると破壊的になりやすく、何事も長続きしない傾向があります。無謀から起こる災難や、地位に関する不名誉な事件にも注意を要します。
天王星と火星の不調和。神経的な紛争が多く、些細な事柄にも激しく反発する性格のため、自ら闘争的な環境を作り出していきやすい。過労によるストレスや、機械による事故に注意が必要です。

太陽と海王星がオポジション(180度)。
子供っぽく、自己中心的なところがあります。ある種の無関心があり、無定見な人生となりやすいでしょう。あるいは現実離れした夢のような名声や成功を渇望し、しばしば偽善に走ったり虚業を志向することになるでしょう。


独立心が旺盛で、優れた計画性を持つ人だったんだろうなー。現実的に、堅実に物事を考えられるという点で、これまでの天皇とは一線を画す存在だったのでわ。
「孤独」というのは性格的なものと、宿命的なものの両方からきているみたい。摂関家との対立は頼通たちが一方的に後三条天皇を妨害していたのだと思っていたけど、後三条天皇の方にも問題があったのかもね。

「育った環境や若年期に受けた教育が成人後の人生コースを決定することが多いでしょう。」
後三条天皇の現状刷新力は藤原実政や大江匡房の教育の賜物なのかな。

「ロマンスとは無縁な人柄ですが、一度心が決まればその愛情は長く続き、心変わりすることはありません。」
源基子以外はどうでもよさそうだよね…。「國文學」の後宮特集で角田先生が後三条天皇について「後宮の女官を寵愛し男子をもうけたにもかかわらず、彼女たちを更衣やその他の皇妃とはしないという非常に無責任な形をこの後定着させることになる。」と書かれているのを読んで、ヒデェと思いました(^_^;)他の文献では確認出来てないので、後三条天皇から始まったことなのかはイマイチ確証が持てないのですが。平安時代初期だったら女官に手を出した天皇もいると思うんだけど、その場合は全て皇妃にされていたのかな。

土星・天王星・火星のあたりは崩御のことが思い浮かびました。天皇は亡くなる三か月ほど前に住吉社に参詣しているのですが、そこで住吉の遊女を買ったのではないか、という記事をなにかで読んだ気がするんですよね。体調崩して抵抗力が弱っているときに、そんなことして病気がうつったりしたらどうすんじゃ、と。住吉社への参詣は当時の感覚からすればまだわかるんですがね、病気平癒のこともあったでしょうし。遊女の件はもちろん事実かどうかはわからないんですけど、なんだかなぁと。
後三条天皇って、天皇親政や各種改革といった良いことばかりがクローズアップされがちだけど、女性関係では白河・鳥羽とどっこいどっこいなんじゃないのかな~って思ってしまうんですよね。後三条天皇の基子の引き上げっぷりって、鳥羽院と美福門院になんかかぶる…。


 参考文献
石川源晃 1991 [実習]占星学入門 株式会社平川出版社
ルル・ラブア 2005 占星学 実業之日本社
茂原輝史(編) 1980 國文學ー解釈と研究「後宮のすべて」 學燈社
竹鼻績 1984 今鏡 講談社
東京大学史料編纂所(編纂) 1980 大日本史料 東京大学出版会
山中裕・秋山虔・池田尚隆・福長進(校注・訳) 1998 栄花物語 小学館

プロフィール

ゆきめ

Author:ゆきめ
ブログタイトル:しおんのいだしぎぬ。

日々のこと、趣味について語りたいと思います。
心理学、西洋占星術、歴史(主に院政期)など。
よろしければおつきあいくださいませ☆

2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

公募小説の投稿などは「遠野紗雪」という名前を使っています。
note、「小説家になろう」サイトにも投稿しています。

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お手数おかけしますm(_ _)m

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