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2016-09-26

思いつきホロスコープ診断9

2011/08/03 15:53 参照数324

後鳥羽上皇のホロスコープを診てみます。

治承4年7月14日 京都生まれ
西暦にすると1180年8月6日

〈ユリウス暦で診た改訂後〉
獅子座の第二旬の太陽。
権力への熱望と王者の威厳を持ちます。この生まれの人は、自分の魅力と才覚によって社会的に顕著な存在になろうとし、名誉と栄光を欲し、賞賛を求める気持ちにも強いものがあります。物事に対しては全力を挙げて正々堂々と取り組み、けちや卑小さを憎みます。うぬぼれに近い自己過信がある半面、寛大さと度量の広さがあるので、自然と配下に人が集まります。しかし、立場を得られぬ時の焦慮と憂鬱にも目に余るものがあります。
また、この生まれの人は太陽に加えて木星の影響を受けます。太陽の明るさに木星の正義感が加わり、快活で誠実なバランスのとれた人となります。しかし、国政の否定的性質が現れると、高慢となり偏狭となって、自分のために友人を犠牲にしたり、不当に富みを得ることを恥じなくなります。

水瓶座の月。
理解力に富み聡明な性格で、明るい気質の持ち主です。
進歩的な科学精神を持つ半面、幻想的な要素を持ち、神秘的な事がらに惹かれます。
同傾向の人と結ばれやすく、人を信じ、グループ行動に熱心です。
友愛心に富み、親しみやすい社交性を持っていても自主性を失わず、自他ともにプライバシーを尊重します。
因習にとらわれた考えを嫌う傾向もあります。

水星と金星の合(0度)。
快活な性質と愉快で気楽な態度を与える座相です。
人付き合いがよくて如才なく、話術に魅力があり、楽しい遊びや社交を求めます。

月と海王星の合。
非常な感受性と空想がちな心、心霊的素質を持ちます。
感情が高ぶりやすく、敏感過ぎる心が現実に対応できず、隠遁生活を好むこともあります。
男性は秘めた情事を持ちやすいでしょう。

これに火星がオポジション(180度)。
月と火星のオポジション。
横暴で人と争う性質を持ち、怒りっぽさ気難しさが目立ちます。
短気で忍耐力に乏しいところがあります。取り戻しの困難や失敗や損失に遭いやすい。
金遣いが荒く、低級な交友や飲酒にの習慣に赴く傾向もあります。
海王星と火星のオポジション。
自己賛美と他人を疎んじる傾向があり、憎悪と我儘が人格的な欠点を作ります。
非現実的な野望を持ちやすく、努力の方向性を誤るため失望に見舞われます。
官能への耽溺から精力消耗するという暗示も出ています。

月・海王星・火星に対し天王星がスクエア(90度)でT‐スクエア。
変革を司る天王星との凶座相ということで、革命心があだとなりやすい。
独創性が奇異に映り、変人扱いされることもあるかもしれません。
感情・ロマン・闘争心において、その傾向が強まるでしょう。
天王星と海王星の凶座相に関しては、
精神的混乱を招くような奇妙な空想癖と不鮮明な意識を持ちます。
不安定な情緒と敏感で落ち着かない性質があり、迷いと不吉な予感によって前進を妨げられやすいでよす。
この座相は、この世代の刹那主義的な生き方や、信じられるものを見いだせない精神的不幸と関係がありそうです、
ともいわれています。

太陽とカイロンがオポジション。
自分の存在を表す太陽がトラウマやコンプレックスを司るカイロンと対立しているため、自分に自信が持てなかったり、欠落感のようなものを抱いていたりしていたかもしれません。

火星と木星のトライン。
積極的な人生観を持ち、寛大で勇志熱烈な性格です。
男性的なエネルギーが強く、偉大で強力な創造力を持ちます。
集団を指導統率する能力とともに規律に対する忠誠心があり、冒険的行為から名誉を得ます。

木星と冥王星がスクエア。
冒涜的な宗教観を持ち、財力と金権力を渇望します。
悪徳や不正に走りやすく、財政的な問題にもモラルを問われがちです。
また、政治的な権力抗争に関係しやすいでしょう。
最悪の場合は、社会的勢力・地位・財産など、一切を失う不運にも見舞われます。

木星と天王星がセクスタイル(60度)。
楽天主義的な独立精神を持ちます。
宗教や哲学への独創的な見解とともに、高度の知識や学術への理解があります。
幸福な理想と高い政治理念を持ち、新しい事物に対する先見力と予知能力もあります。
予期せぬときに利得を得たり至福の好機に巡り合うでしょう。

〈まとめ〉
「同傾向の人と結ばれやすく、人を信じ、グループ行動に熱心です。友愛心に富み、親しみやすい社交性を持っていても自主性を失わず、自他ともにプライバシーを尊重します。」のあたりは和歌のつながりを連想しました。和歌を含む芸術事業の庇護者としてはなかなか名君だったのかもしれません。やり過ぎ感はありますが。

「横暴で人と争う性質を持ち、怒りっぽさ気難しさが目立ちます。」「短気で忍耐力に乏しいところがあります。取り戻しの困難や失敗や損失に遭いやすい。」「非現実的な野望を持ちやすく、努力の方向性を誤るため失望に見舞われます。」短慮な性格がよく出ていますね(^_^;)努力の方向性を見誤るため~。確かにな!となってしまいました。

「信じられるものを見いだせない精神的不幸」混沌の時代を表していますね。天王星の影響がよくないので、「変化を好む」「独創性を大事にする」といったことが悪い方に出やすいんですね。承久の乱は、やはり起こすべきではなかったと思いますね。

神器なし即位による劣等感、精神的欠落感は、太陽とカイロンのオポジションの影響でしょうか。

「政治的な権力抗争に関係しやすいでしょう。最悪の場合は、社会的勢力・地位・財産など、一切を失う不運にも見舞われます。」
これなんかはまさしくそうですね。
個人天体である火星が木星とアスペクトをとっているため、木星と外惑星のアスペクトの影響を受けてしまったようです。


行動的、かつ活動的なホロスコープ。良いところももちろんたくさんあるのですが、悪い部分、欠点が強調されてしまった印象を受けますね。天王星が上手く使えなくて苦労した印象も持ちました。



〈グレゴリウス暦で診た改訂前〉
獅子座の第二旬の太陽。
権力への熱望と王者の威厳を持ちます。この生まれの人は、自分の魅力と才覚によって社会的に顕著な存在になろうとし、名誉と栄光を欲し、賞賛を求める気持ちにも強いものがあります。物事に対しては全力を挙げて正々堂々と取り組み、けちや卑小さを憎みます。うぬぼれに近い自己過信がある半面、寛大さと度量の広さがあるので、自然と配下に人が集まります。しかし、立場を得られぬ時の焦慮と憂鬱にも目に余るものがあります。
また、この生まれの人は太陽に加えて木星の影響を受けます。太陽の明るさに木星の正義感が加わり、快活で誠実なバランスのとれた人となります。しかし、国政の否定的性質が現れると、高慢となり偏狭となって、自分のために友人を犠牲にしたり、不当に富みを得ることを恥じなくなります。

天秤座の月。
親しみやすく社交的な人柄で、人に好かれる要素を備えています。詩や芸術を愛し、その才能もあります。本来は無精でのんきな性格です。道徳的にはやや疑問に感じられるところもあり、恋愛遍歴を重ねやすく、異性とトラブルを起こしやすいでしょう。

太陽、MC、ドラゴンヘッドの合、及び太陽のカルミネート。
太陽とMCの合。人生における自己の使命の自覚を意味します。明確な目的意識があり、自発的な行動による業績を尊重します。
太陽のカルミネート。自力決定をモットーとし、他人に制肘されることを嫌うワンマンタイプの人でもあります。気位が高く、権力を志向し、栄光を望み、自力で社会的地位を固めようとします。
太陽とドラゴンヘッドの合は他人と交際したり、結合したい願望を表します。共同社会と調和する性質があり、知的・物質的な目的に基づいた連合に成功します。

水星と金星の合。
快活な性質と愉快で気楽な態度を与える座相です。人付き合いがよくて如才なく、話術に魅力があり、楽しい遊びや社交を求めます。

海王星、天王星、月が海王星を中心にT-スクエア。
海王星と天王星のオポジションはこの時代を象徴する大惑星のアスペクトですが、これに月が絡んできます。
また、このアスペクトは刹那的な生き方や、信じられるものを見出せない精神的不幸と関係がありそうです。この方はこれに感情面を司る月が絡んでいるため、特にその影響を受けやすいでしょう。自己欺瞞の傾向があり、偽りを言う性質と人気取り主義があります。また、自意識過剰気味なところがあります。頑固で喧嘩腰になりやすく、他人を見下す傾向もあるようです。反抗精神が強く、非常識な行動をとりがちです。
天王星と海王星凶座相持つ人は不安定な情緒と敏感で落ち着かない性質があり、迷いと不吉な予感によって前進を妨げられやすいでしょう。

海王星と火星のオポジション。
自己賛美と他人を疎んじる傾向があり、憎悪と我儘が人格的な欠点を作ります。非現実的な野望を持ちやすく、努力の方向性を誤るため失望に見舞われます。官能への耽溺から精力消耗するという暗示も出ています。

火星と木星のトライン。
積極的な人生観を持ちます。男性的エネルギーが強く、偉大で強力な創造力を発揮します。集団を指導統率する能力とともに規律に対する忠誠心があり、冒険的行為から名誉を得ます。

月と冥王星のトライン。
多情多感で爆発的な気質の持ち主とはいえ、気位が高く自分でよく感情をコントロールします。肉親愛に富み、身内意識が強いでしょう。環境を支配する能力とともに、人間関係を政治的に利用する特殊な能力を持ちます。

天王星と水星のトライン。
革命的な精神を持ち、独立的で他人に制肘されない性格です。鋭い認識力があり、比較が的確です。特殊な分野に秀でた人となりやすいでしょう。


トラインも多いし、凶座相も適度にある。そう悪いホロスコープではないと思うのですが…。承久の乱→配流の流れはやはり多くを望みすぎてしまった結果なのでしょうか。
「人生における自己の使命の自覚を意味します。明確な目的意識があり、自発的な行動による業績を尊重します。自力決定をモットーとし、他人に制肘されることを嫌うワンマンタイプの人でもあります。気位が高く、権力を志向し、栄光を望み、自力で社会的地位を固めようとします。」
「自己欺瞞の傾向があり、偽りを言う性質と人気取り主義があります。また、自意識過剰気味なところがあります。頑固で喧嘩腰になりやすく、他人を見下す傾向もあるようです。反抗精神が強く、非常識な行動をとりがちです。」「非現実的な野望を持ちやすく、努力の方向性を誤るため失望に見舞われます。」
「うぬぼれに近い自己過信がある半面、寛大さと度量の広さがあるので、自然と配下に人が集まります。しかし、立場を得られぬ時の焦慮と憂鬱にも目に余るものがあります。」

太陽、MC、ドラゴンヘッドの合、及び太陽のカルミネートが人生に大きく作用している感じですね。良くも悪くも。

あとは海王星、天王星、月のT-スクエアかな。天王星と海王星のスクエアが形成されるのは1180年1月~1186年7月までです。治承・寿永の乱、高倉天皇退位→安徳天皇の即位などが起こっています。「刹那的な生き方や、信じられるものを見出せない精神的不幸」の影響をもろに受けちゃっている感じなんですかね。

それと、月と冥王星の吉座相は白河法皇も鳥羽上皇も持ってましたね。上皇をやる上では重要な能力なのかも。

運が良くなかったら、そもそも天子になんてなれていないし、こんなもんかな、という感じです。後鳥羽院については有名な論文・本も読んでいないので当たっているのかはちょっと不明ですが、個人的にはTHE・獅子座な印象です。

   参考文献
石川源晃 1991 [実習]占星学入門 株式会社平川出版社
ルル・ラブア 2005 占星学 実業之日本社
岡本翔子 2008 心理占星学入門 株式会社アスペクト


例によって「占星学」からほとんど引用してしまいました。訴えられないかちょっと心配です(汗)。
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2016-09-16

今鏡ワンドロ「尊子2」

数か月後、尊子と師房の住む邸に、頼通がやって来た。

「ここが、新居か。なかなか住みやすそうなところじゃないか」
さわやかに声をかける頼通。

「万寿宮、いや師房は?」
頼通が手近にいた女房に聞く。
「ここにおります」
師房が、たった今気づいたかのようにそれに応える。
「ああ、久しぶりだね。元気だったかい?」
「元気ですよ。本当に皆さん、私を丁重にもてなしてくれて」
そこで師房は傍にいた女房たちをぐるっと見回した。
「まあ、殿のお上手なこと」
女房たちは口に手を当てて微笑する。
「本当のことですよ」
「こら、それじゃ元居た私の住まいが窮屈だったかのようじゃないか」
「いえ、そんなことは。滅相もありません」
師房が驚いた表情を作る。
「冗談だよ」
頼通が笑う。
それにつられて、周りにいたものが皆笑った。
「私の自室を案内します。養父上(ちちうえ)、こちらへ」
「ああ」


二人が去った後で、女房たちはひそひそと囁き声を交わす。
「殿と関白殿の仲は相変わらずね」
「あの噂は本当なのかしら」
「噂というか、風聞というか……。まあ、別にいいのではなくて? 上さま(尊子のこと)におかれては、まだまだ子供で、そういったことには鈍いように思われるし」

そこに、尊子がやって来た。
「お前たち。あにが来たという話だけれど、何をしているの?」
「上さま。いえ、私たちは何も」
「殿たちはどこへ?」
「殿の自室に行かれました」
「そう、なら私も挨拶をしなくちゃね」
「いえ、それには及ばないかと」
「? 変なことをいうのね」
尊子は怪訝な表情をする。
女房たちは、気まずそうな顔をしている。
尊子は意に介さずに、師房の自室に向かった。
(そうだ、こっそり入って驚かせてしまおう)
尊子の表情が稚気に富んだものになる。


手始めに、節穴から師房の自室の中の様子をそっと窺う。
そこで、尊子が目にしたのは、意外なものだった。

「尊子とは上手くやれているのかね?」
「ええ、もちろんです」
「そうもはっきり言われると、少し妬けるな」
「尊子を妻に、と先の関白さま(道長のこと)に懇願されたのは、養父上(ちちうえ)ではありませんか」
「それはそうだが」

(えっ、なに……? なにをいっているの、この人たち)
尊子は混乱した。
会話の内容だけなら、冗談ととることも可能だろう。
だが、師房の表情を見ていると、とても冗談を言い合っているとは思えなかった。
師房の頬はほんのり上気していた。
声音にはなんとなく甘えるような、媚びるような調子がある。
媚態、とでもいえばいいだろうか。

尊子は目の前が真っ暗になる感覚を覚えた。
だが、考えてみるとこれですべて合点がいく。
さっき女房たちが囁きあっていたこと。
所顕し(ところあらわし)の儀の際に「師房を、頼む」と言われたこと。
この二人は、情を交わしあう仲だったのだ。
なんで、どうして。
そっとその場を後にした尊子は、誰にも気取られぬよう自分の局に戻った。

わたしは、これからどうすればいいのかしら。
一人になって、考える。

父にごねれば、離縁することは可能だろう。
母とともに、泣き落としにかかったっていい。
元々意に染まなかった婚姻なのだから。

でも……。

尊子は自分が離縁出来ない理由をなんとか探そうとしていることに、このときになって気付いた。
何をこんなに必死になっているのだろう。
うっすら目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。

わたしは、夫をあいしている。
それは、疑うべくもない、事実なのだ。


尊子はこの日以後、なにも知らない顔をして夫と日々を過ごした。
「姫さまにおかれましては、すっかり大人びて。やはり婿を取ると違いますね」
乳母がうれしそうに語る。
尊子は何も言わずに、少し乾いた笑い声を漏らす。

わたしはなにも知らない。なにも、見てはいない。
わたしの心の上を、誰も知りはしないのだ。


変化が訪れたのは、尊子が子を産んだときである。
「これが、この小さな生き物が、私の子供」
師房は感激して号泣していた。
「まあ、殿ったら。なんて大仰な」
尊子が笑う。
「ありがとう、本当にありがとう」
尊子の手をしっかり握る。


数か月後。
「ねえ、あなた。お養父上のところには行かなくていいの?」
「別にいいよ。使者を立てているし」
「そうは言っても、やはりあなたから直接報告して上げた方がよろしいのではなくて?」
「いいんだよ、私ももう子供ではないのだし」
「でも、あににとって、あなたは特別な人なのだし」
「特、別?」
尊子がしまった、と思ったにときはもう遅かった。
師房の表情は、硬いものになっていた。
「上、あなたはどこまで……」
尊子が目を逸らす。
「すべて、知っているのですね」
「一体、いつから?」
「婚礼の日に、あにが邸を訪れたときから……」
「そんなに前から!? 知っていて、何も言わずに……」
怒声を浴びせられるのを覚悟した尊子は、きゅっと目を閉じる。
だが、次に尊子が感じたのは、あたたかなぬくもり、だった。
尊子は師房に抱きしめられていた。
「辛い思いをさせましたね。申し訳ありません」
「あなた……」
尊子の目から大粒の涙がこぼれる。
「これからはあなただけを見ます。養父には逢いません」
「いえ、そういうわけにはいかないわ」
「大丈夫です。子供が出来たことで、私も区切りをつけねば、と思っていました」
「でも、出世に関わってしまうわ」
「養父はそんなに狭量な人ではありません。それともいやですか? 立身出世を望めない男は」
「そんなことあるわけないのに。わかっていて、わざとそんなことをいうのね、ひどい人」
師房が尊子に向かって微笑する。
少し痛々しい笑みだ。
「今後はあなたを、家族を、大切にします。私が本当に欲しかったのは、自分の家庭を持てる幸福だと、気づいたから」
尊子が師房を見つめる。
うっすら笑みを浮かべながら。


*****

頼通と師房に関しては、こちらのSSもよかったらご覧ください。
テイストがだいぶ違います。
かなり前に書いた作品なので、稚拙でお恥ずかしいのですが(^_^;)
「罪と贖い」
http://shionnoidashiginu.blog.fc2.com/blog-entry-347.html


尊子は当初二人の関係をなまあたたかく見守る腐女子、という設定にしようかと思ったのですが、やめました。
歴史上の人物だと、あまりにもとっぴな設定にするのははばかられます。
どうしてもシリアスな感じになってしまいますね。
「師房を、頼む」とか、尊子にズッコケさせるとかして、もっとギャグっぽくしたかったのですが。
2016-09-15

今鏡ワンドロ「尊子1」

万寿元年(1024年)二月。

頼通の義弟であり、養子でもある師房が尊子のもとに三日間通いつめた次の日、所顕しの儀が行われた。
師房と尊子は邸の大広間の上座に座り、夫妻は身内や訪問客の対応をしていた。

尊子はただ人に過ぎない師房との婚姻に不服で、始終仏頂面をしていた。

(なんでわたしだけ、元皇族とはいえただの臣下と。お父様は私が可愛くないんだわ。私の器量に問題があるからかしら)

尊子は母や同母姉に似ず、美しいとはいいがたい容姿をしていた。
鼻の横に大きなほくろがあった。
加えて、顔の均衡を少しだけ欠いていた。
大きすぎる目と、小作りな口と鼻は、見る人が見れば充分魅力的ではあったが、本人は鏡の前でため息をつくことが多かった。

訪問客の前ではにこやかに礼をのべる尊子は、前に人がいなくなると途端に不機嫌な顔になる。
夫の師房はそれを咎めもせず、また悲しみもせず、なにも見ていないかのようににこにこと笑っている。
無邪気といえば無邪気だが、凡庸、といえないこともなかった。

そのとき、頼通が尊子のもとにやって来た。
軽く一礼をして、二人の眼前に座る。
尊子は浮ついたところのある頼宗よりも、血気盛んな能信よりも、この穏やかながら頼りがいのあるようすの異母兄頼通が好きだった。
「尊子」
「なんでしょうか」
花嫁の視線が、そっと上目がちになる。
尊子は異母兄の言葉に期待した。
「きれいだな」
「すっかり大人びて」
といった言葉を。
だが、頼通の発した言葉は意外なものだった。
「師房を、頼む」
真顔で、頼通はそう言った。
「おにいさま?」
小声で聞き返す尊子。
それに気づいたのか、気づいていないのか、頼通はすぐさまその場を離れてしまった。

すぐに別の訪問客がやってきて師房と尊子はその対応に追われた。
尊子は異母兄の発言の真意をはかりかねたが、養い子可愛さからくる一時の感傷だと考えた。
なんとなく、ひっかかるものを感じてはいたが。


婚礼の儀の終わった後。
明るいところで、師房はまじまじと尊子の顔を見る。
「なっ、なによ」
尊子はきまりが悪くなって目を逸らした。
「悪かったわね、美しくなくて。私なんて、どうせ……」
「尊子さん」
師房が尊子の言葉を遮る。
「あなたは美しくはないかもしれない。でも、十分に魅力的ですよ」
師房の顔には微笑が浮かぶ。
「鼻の横にある大きなほくろも、大きすぎる目も、小作りな鼻と口も、とっても個性的だ。私はそれを、とても愛しく思いますよ」
「……正直な人ね」
「ええそうです。それだけが取り柄です」
そう言って師房はにっこりと笑う。
「あなたには負けるかもしれませんけどね」
尊子が首を傾げる。
「思ったことを、包み隠さずに態度に出す。私は婚礼の儀の様子を見て、この人はなんて素直で強い人なんだろう、と感心してしまいましたよ」
「子供っぽい、の間違いではなくて?」
「あなたの立場に立ってみれば、無理からぬこと、と思えますから。私にとってこの婚姻は、身に余る果報といって差し支えありません」
師房は尊子の目をしっかりと見る。
「でも、私はあなたに誓いますよ。夫婦となった以上は、あなたをこの上なく大切にもてなす、と」
「あら、もてなすのは婿をとったわたしであって、あなたではないわ」
「これは一本取られましたな」
師房はそこで初めて声を立てて笑った。

さっきまで、自分の容姿を卑下していたのに。
この人と一緒なら、なにかが変わるのかもしれない。
尊子は自分の心が何となく明るくなったことに気づいた。
プロフィール

ゆきめ

Author:ゆきめ
ブログタイトル:しおんのいだしぎぬ。

日々のこと、趣味について語りたいと思います。
心理学、西洋占星術、歴史(主に院政期)など。
よろしければおつきあいくださいませ☆

2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

公募小説の投稿などは「遠野紗雪」という名前を使っています。
note、「小説家になろう」サイトにも投稿しています。

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お手数おかけしますm(_ _)m

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