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2017-08-24

下戸はつらいよ

カモアズマさんhttp://www2.ttcn.ne.jp/~heike
発刊の同人誌「『台記』現代語訳(二)」を参考にしました。
本文に出てくる単語の紹介なども載っています。
とても親切なつくりで感動しました(*^_^*)

ブログ自体のリンクにも追加しましたよ☆

*****

保延三年(1137年)九月二十五日。

ぽつりぽつりと雨が降っていた。
辰の刻ごろ(八時前後)に、五位蔵人の朝隆から頼長のもとに消息が来た。
次のようなものだ。
「今夜の和歌会の題は『菊契千秋』です。この題は、今夜講じられるでしょう」

和歌会自体は前々から決まっていたものだったので、頼長は
「参上いたします」
と返事を書いた。
内心では気がすすまなかったのだが。

和歌は、苦手だ。
どうにもうまく詠めない。
和歌の達者ものに詠み方を問うたこともあったが、そのときは「心のままに詠めばよいのですよ」などと言われた。
そこで私はこんな和歌を詠んだ。
「昨今の公家のしきたり嘆かわし 誰もが忘れ 何も残せぬ」
すると達者ものは呆れ顔で、
「和歌は意見発表会ではありません。心の上澄みを捨て、思ったこと、感じたことをありのままに伝えるものです。」
と言った。
それに対し、私は
「そなたの言い分は抽象的過ぎる。私にはわからない!」
と突っぱねた。
「内大臣(頼長)さまにおかれましては、どうも心に鎧をまとっていらっしゃるご様子。それらを解(と)き、もっとお心を軽くされてから私のもとにいらしてください」
「和歌を教えてはくれないのか?」
「教える以前の問題ですよ」
達者ものは肩をすくめる。
たいした身分の者ではなかったがその道の達人とあって、内大臣を前にしても臆するところがない。
「まあ良い。今日は下がれ」
頼長がぞんざいな口調で言う。
退室のときばかりは達者ものも畏まったようすで礼をし、その場を退いた。


和歌などが、何の役に立つというのだ。
それでも公卿として行事に参加しないわけにはいかない。
頼長は身支度をととのえる。

「葛葉」
家女房を呼ぶ。
「束帯(貴族の正装)を用意せよ」
「かしこまりました」
和歌会の場である仁和寺には宿所がなく、着替えるのが難しい。
束帯を着るといささか疲れるのだが、ここは仕方がない。
着替えは持って行かず、束帯姿で行くことにしよう。


仁和寺に着いた。
朝隆が頼長のもとに来てこう言った。
「乗船会のため、所が設けられました。乗船会はすでに終わり、今しばらくは酒会があるということです」
なに、酒会か。気がすすまないが、もう来てしまったものは仕方がない。
頼長は少し落胆したが、それを気取られぬように明るく返事をした。
「わかった。御苦労」
しばらくして、左大臣の源有仁殿が宿所から出て来られた。
直衣(貴族の日常着)だ。
う、うーむ。
宿所が用意され、着替えるところがあったということなら仕方がないか。
左大臣殿は洒落者(しゃれもの)でもあるし、な。
もやもやしつつも、それを顔には出さない。

頃合いを見て、御遊びの座につく。
見れば束帯姿なのは参議実衝・散三位有賢・参議忠基ぐらいのもので、他の者は皆直衣だ。

しまった、ドレスコード(衣装の歩調合せ)を間違えたようだ!

頼長は失敗したな、と思った。
だが、すぐに気を取り直した。
間違っているのは私ではなく、皆の方だ、と。

公事にそんな恰好で来て良いのか。
こんなことだから公事が廃れるのだ。
頼長は心の中で悪態をつく。

それでも気を取り直して、御遊びにうつる。
筝は左衛門督宗輔。
琵琶は左大臣源有仁と新大納言実能。
拍子は左兵衛督宗能。
篳篥は左衛門佐源季兼。
横笛は公教・実衝・忠基・公能。
笙は権大納言雅定と私。
和琴は有賢。
である。

まずは双調、次に平調。
どうもいつもの御遊びらしくない。

今神歌、朗詠といった催しが次々と行われた。
御遊びのあいだに、主上に御膳をお出しした。
その役は実能が担った。

今夜の酒は強い酒なのだろうか。
私は飲まないのでわからないが、どうも皆の様子が変だ。
一上(いちのかみ)である有仁殿まで舞っている。
摂録の人(忠通)までもが乱舞している。
奇異なことだ。
関白(忠通)が舞い終わり、すぐにその場から退き逃れた。
途中で恥ずかしくなったのだろうか。
人々は皆、座を立った。
やっと亥の刻(二十時前後)になった。

頼長は忠通の直蘆に行った。
忠通は頼長に和歌を与えた。
「お前が詠んだことにして主上にささげよ」
酔っぱらった様子でいう。
「そんなことをしても露見してしまいますよ」
「お前が清書をすればよい」
「はあ」
頼長は書き始めるものの、自分の字が下手なために気がすすまない。
「やはり私ではなく殿下が書いた方が……」
「良いのだ、こういうのは心意気だ」
「は、はあ」
素面(しらふ)の頼長は、思わぬ酔態を見せる異母兄に少し戸惑ってしまう。
それでも書き上げると、
「出来ました」
と言って忠通に見せた。
「よし、お前にしては上々だ」
「主上のもとに行くぞ」
「えっ、今からですか?」
「当たり前だ!」
忠通が頼長を連れて主上のもとへ参上した。


和歌を主上に奉る作法には不備もあったが、滞りなく済んだ。
頼長は胸をなでおろした。


それにしても。
酒というのは、全くもってけしからぬものだなあ。
日頃は立派な様子でいらっしゃる殿下や有仁殿の、あのようなふるまい。
私は酒が飲めなくて本当によかった。
頼長はつくづくそう感じた。


頼長のいないところでは、このような会話が聞かれた。
「全く、内大臣殿(頼長)の風流を解さないさまには呆れますなあ」
「和歌も詠まず、唄も歌えない。管絃も不得手、ときている」
「酒の入った時ぐらい、もっとはっちゃけてもよいのに。場が白けてしまいますよ」
「皆が直衣を着ていたのにも眉を顰めてもおられましたな。本人は気づいていらっしゃらないと思いますが」
「まあ、仕方がありません。しかし、酒を飲む楽しさがわからないとは、下戸もつらいものですな」
そこで一座はわっと笑った。


上戸(じょうご)と下戸(げこ)には、どうにも埋められない溝(みぞ)がある。
それは千年前も変わらなかったようである。


   参考文献
台記

   参考サイト
綺陽装束研究所http://www.kariginu.jp/
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2017-08-12

上越妙高のイルミネーション☆

日帰りでアパホテルのイルミネーションを見に行ってきました。
とてもキレイでした~(*´ω`*)































2017-08-03

長岡花火2017

長岡花火を観に行きました☆
素晴らしかったです(≧▽≦)!
平原綾香さんの「ジュピター」にのせた連続花火は最高でしたし、「天地人花火」も壮大でよかったです。
あと、今年は仮説トイレの横にアルコールスプレーが置いてあって、去年より運営は確実によくなってるな~と感じました。





























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ゆきめ

Author:ゆきめ
ブログタイトル:しおんのいだしぎぬ。

日々のこと、趣味について語りたいと思います。
心理学、西洋占星術、歴史(主に院政期)など。
よろしければおつきあいくださいませ☆

2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

公募小説の投稿などは「遠野紗雪」という名前を使っています。
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