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2018-06-16

「月なるものを弄する」

ツイッターのハッシュタグに反応いただきました。

#フォロワさんが5秒で考えたタイトルからあらすじをつくる
https://twitter.com/yukime0128/status/1007598024795742209

「月なるものを弄する」
良ければお願いします!
https://twitter.com/wakamiyako/status/1007823856885616641

あらすじということでしたが、素敵なタイトルをみたら書きたくなったので書きました(*^_^*)
稚都さん、ありがとうございます。

さめざめとした空気の船上。
夜空の星たちは自己の存在感を示したいのか、きらきらと瞬いている。
月が、その星々を圧倒するかのように、天頂において燦然(さんぜん)と輝いていた。
ひやりとした冷気が、二人の身体をかすめる。
頼長と成親は、そろって身体を震わせた。
「初夏だというのに、この寒さはなんだ」
頼長は口を尖らせる。
「時間が時間ですから」
成親が笑いながら答える。
頼長の機嫌を損ねぬよう、細心の注意を払いながら。
少しの間、間があった。
「何ヶ月ぶりですかな。貴殿とこうして会うのは」
頼長は成親と目を合わせる。
「ずいぶんと待たされた気がいたします」
成親が答える。
微笑を浮かべながら。
「待った? そなたが? いまやどの殿方からも引く手あまただというのに」
どの殿方からも。
そこに少しの侮蔑の色を感じながらも、成親はなおも微笑を崩さない。
「それでも、左大臣様は私にとって特別ですから」
「ほう」
頼長が、持っていた扇で成親のあごを持ち上げる。
「そなたは美しい。その唇も、唇からもれ出(いず)る言葉の数々も。だが、私にはそれがまがいものの輝きのように感ぜられることがある」
「まがいもの、ですか」
頼長の失礼な物言いに、成親の眉がほんの少しだけだけ動く。
「なるほど。私の言葉も、私自身も、確かにまがいものかもしれません。ですが、完全にまがいものでないものなど、この世にそうそうありますか? 純粋なもの、例えば聖なる場所から湧き出る真水のようなものが、必ずしも良いものだとも限らないでしょう」
「そうかもしれぬ。そのような場所でとれた真水は、飲めるものでもないしな。だがまがいもの、贋物(にせもの)は、所詮贋物でしかない。そのようなものは今夜の月の白い光に照らされて、瞬く間に正体を現すであろうよ」
しばらく会えなかったことを責めておられるのか、あるいは忠告の類いか。
頼長は単純な男だが、鋭いところもある。
どちらともはかりかねた成親は、話題を変えることにした。
「月もまた、まがいものの一種かもしれませんよ」
成親は酒を入れた椀(わん)を少し揺らした。
椀に映った月が、歪んでいびつな形になった。
「あの白々と輝き、すべてを白日のもとにさらすような月。その月さえも、こうして私ごとき者の手の中で歪められてしまう。遠くにある真実は、近寄せることによってまた違うものになる。そんなものだとはおもいませんか?」
「ふむ。月なるものを弄する、といったところか」
頼長は口に手を当てて、考え込むような仕草をした。
「面白い。そなたもいろいろと考えているのだな」
相変わらず失礼な男だ。
成親はそう感じつつも、顔には出さない。
「杯に映った月。その月をどうするかはその人の自由です。風流物として眺めるか、詩歌の題材にするか、はたまた……」
成親は言葉を続けない。
「はたまた?」
頼長が先を促す。
「いいえ、なんでもありません」
「おかしなやつだ」
成親はさらりと頼長の言をかわす。
「風がいよいよ冷たくなってきた。中へ入ろう」
頼長が成親の手を取る。
その手を見つめながら、成親は考える。
杯に映った月を弄ぶ(もてあそぶ)がごとく、世も思うさまに操れると過信する。
そんな未来が、この左大臣には待っているのかもしれない。
そのときに、私はどう立ち回ることにしようか。
何にせよ、世の趨勢を見極めねば。

すべてを白日のものにさらす月。
その月の光を避けるようにしながら、成親は今夜も頼長に組み敷かれるのだった。
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プロフィール

ゆきめ

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2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

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