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2016-10-16

源氏物語深夜の真剣創作60分一本勝負「紅葉」

「紅葉賀」巻より。


紅い楓がはらはらと落ち、黄色い銀杏(いちょう)はひゅるひゅると舞っていた。
空は真っ青で、雲一つなく晴れ渡っていた。
空気も澄んでいる。

屋外のドームでコンサートを開催したいと聞いた時には、どうなることかと危ぶんだが、こうして晴天に恵まれたのは自分の日頃の功徳のためかと思われる。

桐ハラ壺タは、由緒のある芸能事務所の社長で、信心深い人物だった。

彼には内腹、外腹も含めて大勢の子がいたが、人一倍目をかけているのが下級秘書官に生ませた源氏光(ゲンジヒカル)だった。
源氏光は、ゲンジーの愛称で親しまれている、アイドルである。
野外コンサートを提案したのは、彼であった。
「今の季節は、紅葉が見事です。屋外でするのも風流でしょう。お父上には、ぜひ特等席で見ていただきたいです。なんなら奥様もご一緒に」
奥様も、と言われて一瞬ぎくりとしたが、考えてみれば光は家内を実の母のように慕っていた時期があった。
今回の発言も、義母が懐かしいのだろう、と桐ハラは深く考えなかった。
全く、大人ぶっていてもまだまだ子供だな、と微笑ましくさえ感じた。
光はまだ十代の少年だった。


コンサートが始まる。
桐ハラは彼の妻藤乃を連れ、特等席でトウチュウ&ゲンジーの舞楽を見ていた。
トウチュウは光とユニットを組ませている同じく十代の少年だ。
役員の息子にあたる。
もちろん二人が事務所の関係者の身内であることは秘密である。

日の光が二人を照らす。
人工のスポットライトよりも、その光は優雅で、温かみがあった。
イノセンスな雰囲気を持つゲンジー、洒脱な振る舞いの似合うトウチュウ。
どちらも甲乙つけがたかったが、自然と目が行くのはゲンジーの方であった。
曲は「青い海の波間で」だ。

バックの演奏が佳境に入っても足拍子は軽やかで、苦しそうな表情でもない。
収集の付け方がわからないほどの盛り上がりぶりだ。
それでも二人の健康を気遣ってか、演奏がピタッと止まった。
二人の動きも同時に止まる。

トウチュウが、マイクを持つ。
「今日は、ここにいるすべての人のために歌いました!」
一斉に、みながペンライトをふる。
黄色い声援。

トウチュウが目配せをすると、今度はゲンジーが挨拶をした。
「僕は、ただ一人のために踊りました」
ゲンジーがそういうと、会場からはため息がもれた。
なんて一途なんだろう、この少年に思われている果報者は、一体誰なんだろうと。

桐ハラは、我が息子ながら、なんてウマい、と、光の天性の人たらしぶりに拍手を送りたいような気持ちになった。
特等席を見て言っていたような気がしたが、気のせいだろうか。
なんとなくいやなことを想像してしまったが、その想像は、口に出すのもおぞましいようなことなので、桐ハラは、そのことをすぐに頭から消し去った。

彼の家内、藤乃は、崩れ落ちそうになる自分を必死に抑えていた。
光のただ一人の人というのはこの藤乃のことで、二人は過ちをおかしたことさえあったのである。

桐ハラ夫妻の後ろにいた藤乃の第一秘書の王ノ命コ(めいこ)は、光の振る舞いに思わず舌打ちしたくなった。
藤乃と光の間を取り持ったのが、この命コだったのである。



*****
お題は「紅葉」で、どんなお話にするか迷ったので、ツイッターでリクエストを募りました。

「今のところ光源氏と頭中将が青海波を舞う『紅葉賀』巻の内容や、宇治の景色を背景にしたお話、花散里か空蝉メインの話などを考えています。この人物出して!とかでもいいです。」

って。

そしたら優しい七夕さんが「青海波を舞う二人を……!」と応えてくださったので、青海波を現代風にアレンジしてみました。
二人のセリフが浮かんで、これを言わせるのは物語の延長線上じゃキツイよなあ、と現パロにしてみました。
現パロなのに文章がかたいですね(^_^;)

こういうのを書くのも楽しかったです~。
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日々のこと、趣味について語りたいと思います。
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2012年11月6日ウェブリブログから移行しました。記事の上にある参照数とブログ気持ち玉はウェブリブログのときのものをそのまま載せたものです。

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